私は大学院修士課程を卒業し、化学メーカーに就職しました。
当時、早く仕事で使う知識を身につけたい!と意気込んでいたのを覚えています。
化学分野の新入社員なら、技術士1次試験の勉強がおすすめです。
この記事では、化学メーカーの新入社員が技術士1次試験を勉強すべき3つの理由と勉強法を解説します。
目次
技術士試験とは
技術士は理工系最難関の国家資格です。
技術士となることで、高等な科学技術の専門家であることを、国から証明してもらえます。
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参考化学系技術者として成長するために 技術士がおススメである2つの理由
試験の構成
技術士は専門領域に応じて、化学、生物工学、機械など21の部門に分かれています。
化学メーカーで働いているのなら、化学部門を選択する方が多いはずです。
試験は1次試験(マークシート)、2次試験(筆記+口頭)から構成されています。
合格率
1次試験の合格率は例年40%前後。
やや難易度は高いですが、対策すれば十分に合格できる試験です。
一方で2次試験の合格率は例年10%程度であり、非常に難関です。
問題例
1次試験では基礎、適性、専門の3つの科目から構成されています。
それぞれの問題を見てみましょう。
基礎科目の問題例
例題
問題:(ア)に入る語句を選択しなさい
一定の強度を保持しつつ軽量化を促進できれば、エネルギー消費あるいは輸送コストが改善される。このパラメータとして(ア)で割った値で表す比強度がある。
(選択肢)
(1)強度を密度
(2)密度を強度
令和5年度技術士1次試験問題 基礎科目より改題
この問題は「設計・計画に関するもの」です。
問題は5つの群から構成されています。
5つの群
- 設計・計画に関するもの
- 情報・論理に関するもの
- 解析に関するもの
- 材料・化学・バイオに関するもの
- 設計・環境・エネルギー・技術に関するもの
適正科目の問題例
続いて、適正科目の過去問を見てみましょう。
例題
問題:技術士法第4章(技術士等の義務)の規定において技術士等に求められている義務・責務に関わる説明について、正しいものは〇、誤っているものは×として適切なものはどれか。
(選択肢)
(ア)業務遂行の過程で得られる情報や知見は、発注者や雇用主の財産であり、技術士等は守秘の義務を負っているが、依頼者の情報を基に独自で調査して得られた情報はその限りではない。
(イ)情報の意図的隠ぺいは社会との良好な関係を損なうことを認識し、たとえその情報が自分自身や所属する組織に不利であっても公開に努める必要がある。
令和5年度技術士1次試験問題 適性科目より改題
適性科目では、技術士法や技術者倫理に関わることも問われます。
技術士・技術者としての基礎が身についているかを評価するのが、適正科目と言えますね。
専門科目の問題例
最後に専門科目の問題を取り上げます。
化学部門の高分子に関する問題です。
例題
問題:(A)に入る語句を選択しなさい
熱可塑性エラストマーは、多くの場合、高分子鎖が(A)共重合体になっており、持続長が長く硬い成分(ハードセグメント)と持続長が見近く柔らかい成分(ソフトセグメント)から構成されている。
(選択肢)
(1)ブロック
(2)ランダム
(3)交互
令和5年度技術士1次試験問題 専門科目(化学)より改題
高分子化学については、学生時代には知識がありませんでした。
一方で、化学メーカー社員にとっては必須の知識です。
私は技術士1次試験を通して、高分子化学の勉強をしました。
化学メーカーの新入社員が技術士1次試験を勉強すべき理由
理由は3つあります。
3つの理由
- 化学や理工系の基礎を学ぶことができる
- 社内でアピールにつながる
- 技術士2次試験にスムーズに移行できる
化学や理工系の基礎を学ぶことができる
技術士1次試験の勉強をすることで、化学メーカーで必要な知識を学ぶことができます。
私は有機化学が専門ですが、会社ではその知識だけで仕事をするわけではありません。
高分子の知識も必要ですし、顧客の専門領域という点で生物や物理の基礎的知識も必要な場合があります。
ただ学部生の時に、専門以外の理工系の勉強も行っていますが、忘れていることも多いですよね。
試験対策を通じて、これらの領域を学ぶことができます。
仕事で使う基礎知識を身につけることができるのです。
社内でアピールにつながる
技術士1次試験の合格を推奨している企業が多くあります。
合格すれば受験費用を支払ってくれる企業もあるようです。
このような企業では、1次試験の合格が社内のアピールにつながります。
社内での評価が高まれば、希望する仕事を任せてもらえる確率が高まります。
自己能力向上と、社内評価を得られれば、一石二鳥ですよね。
技術士2次試験にスムーズに移行できる
技術者であれば、技術士取得を目標に働くのがおすすめです。
私も技術士試験合格の過程、取得後の活動で大きく成長できたと実感しています。
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参考化学系技術者として成長するために 技術士がおススメである2つの理由
私が技術士を知ったのは入社6年目の時。
可能であればすぐに2次試験を受けたかったのですが、1次からの受験が必要でした。
2次試験を受験できるのは翌年になるので、長期の学習計画が必要です。
モチベーションを維持できず、途中で諦めてしまう人もいるでしょう。
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参考技術士試験の勉強スケジュール 一発合格時の勉強時間は?
そこで、もし将来的に技術士になることを考えているのなら、1年目に1次試験を受験しましょう。
その方がスムーズに2次試験対策に移行できます。
また、基礎科目や専門科目の内容は、大学の授業で習うものが多いです。
記憶が鮮明なうちに、試験に合格した方が効率的です。
1次試験の勉強方法
過去問を中心に勉強することがおすすめです。
私自身、講義の受講や教科書は用いず、過去問のみで合格することができました。
1次試験の過去問は、日本技術士会のホームページから入手することができます。
問題文だけでなく、解答も確認することができます。
解説は書かれていません。
基礎科目に詳しくない分野があり、解説も確認したい場合は、以下の書籍が役に立ちます。
勉強の進め方
過去問を繰り返し解くことで、試験問題の内容を定着させましょう。
技術士の1次試験は比較的、類題が出やすい試験だと思います。
過去問の解答を復元できれば、合格点に達することができます。
目安として、5年程度の過去問練習をしましょう。
過去問練習の2回目以降で、全問正答に達すればベストですが、8割程度の正解ができれば、合格ラインに達していると思います。
合格のための戦略
あくまで合格点に達すればOKというスタンスで挑めばOKです。
基礎科目、適性科目、専門科目で全ての科目で50%以上を確保できれば、合格できます。
試験本番では、基礎科目、および専門科目は問題から解答できるものを選択します。
つまり苦手な分野は解答しないことも可能です。
私の場合、化学の中でも有機化学が専門ですが、無機化学はあまり知識がありません。
最後まで十分に理解はできませんでした。
そこで、有機化学やそれに近い高分子は全問選択し、無機化学は確実に正当できるものだけを選択することで、合格点に達することができました。
技術士1次試験を受験しよう
メーカー1年目の方に、技術士1次試験を目指すことがおすすめである理由と、勉強法について解説しました。
技術士は理工系の技術者にとって、目標とすべき資格です。
技術者としてのキャリアを積み上げていきたいのであれば、ぜひ受験をお勧めします。