研究職にとって「勉強のスキル」は必要不可欠ですよね。
企業に就職すれば、多少なりとも学生時代とは異なった分野を担当することになるため、新たに勉強が必要。
また、新規テーマを立ち上げようとすると、全く触ったこともない分野を勉強しなければなりません。
未知の分野にもかかわらず、課題を設定し、それに合わせて実験系を組み上げます。
この記事を書いている私(@okamotobiblio)自身、化学メーカーに就職後、新たな分野に挑戦し続けてきたため、その度ごとに勉強をしてきました。
企業研究者が新分野を勉強するには、コツがあると考えています。
この記事では、研究者にとっての「勉強のスキル」について解説します。
研究職が学ぶ意義
そもそも、企業研究者が勉強をする目的とは何でしょうか。
研究職は、知識や情報をもとに仕事を進めていく職種です。
商品の性能を高める、医薬品候補を見出す、最適な製造法をつくるなど、様々な研究に関わる仕事がありますが、そのすべてで前提知識や情報が必要となります。
また、昨今は技術の進歩も早く、勉強なしでは先端技術を取り入れた研究ができません。
これはすなわち、勉強しないと社会ニーズを満たせなくなっていくことを意味します。
アカデミックな研究者だけでなく、企業の研究開発に関わる人も定期的な学びが必要なのです。
企業研究者は何を学ぶか
会社で働く研究者は何を学ぶのが良いのでしょうか。
危険物甲種やTOEICなど、資格勉強を頑張っている人も多いですよね。
私自身も入社1,2年目はこれらの勉強を頑張りましたし、その成果はあったと考えています。
しかし、最も効果があったのは研究テーマ自体の勉強。
ある化合物合成を担当しているのなら、その化合物群の合成戦略を調べる。
別法がありそうなら、その周辺情報を調べる。
あるいは新規テーマ立ち上げのために過去の類似例を調べたり、どんな方法であれば上手くいくのか仮説を立てたり。
この様な仕事に近い実践的な勉強こそが、自分を成長させてくれたという自負があります。
資格の勉強はテスト対策であるため、「勉強」は行いやすいのですが、それだけでは仕事に生かせないことも多いんですよね。
それと比べると、自分に直接関係する研究テーマを学ぶことのメリットは大きいです。
仕事の効率が上がりますし、より深い研究をすることができますよね。
企業研究職のインプット勉強法
勉強はインプットとアウトプットを共に行うことが重要です。
インプットは「暗記」、アウトプットは「発信」と言い換えても良いかもしれませんね。
新たな領域を学ぶためには、暗記は必要不可欠。
一方で、高度な内容を身に着けようと思うと、文章にまとめなおしたり、人に話したりというアウトプットも欠かせません。
「どちらかだけ」ではなく、インプット・アウトプット両方を取り入れることが重要です。
効果的なインプットの方法
インプットする上での最初のステップは、その分野の基礎的な教科書を読むことです。
特に異分野の場合は大学生向けの、最も簡単そうな本を選ぶのがコツです。
英語のレビューで勉強出来たらどんなにカッコイイだろうか・・・と私もよく考えます。
しかし、重要なのは基礎を確実に身に着けること。
そのためには、日本語で読めて、かつ簡単な基礎的な本がおススメです。
もちろん、英語が得意な方は、英語の総説で勉強していただいて問題ありません。
インプットで重要なのは、その分野の重要単語の意味・概念を丸暗記してしまうこと。
そのためにテキストに登場する重要単語を20個程度抜き出します。
単語を抜き出す先として、私はgoogle docsを使っています。
すぐに検索・参照できて、振り返ることができる方法であれば何でも構いません。
単語を収集した後は、取り上げた単語の意味を、すらすら説明できるようになるまで繰り返します。
ちょっと大変な作業ではありますが、未知の分野を学ぶためにはこのインプット=暗記作業は欠かせません。
未知の分野の論文を読む際、理解が停滞してしまうのは、たいていが登場する単語の意味がわからないことに起因します。
基礎的な教科書に登場する単語は、その分野の頻出単語の可能性が高いため、丸暗記してしまうことが重要なのです。
企業研究職のアウトプット勉強法
勉強ではアウトプットも欠かすことができません。
学んだ内容をアウトプットをすることで、記憶が鮮明になり、定着につながります。
研究テーマについてアウトプットするのであれば、所属部署やチームなど、社内で展開するのがおススメです。
私自身も、勉強した内容を社内で共有したり、メルマガ形式で配信したりしています。
社内で展開するメリット
学んだ内容を社内で展開する理由は3つのメリットがあります。
ポイント
- 「見られる意識」があることで記憶に残りやすい
- 質問される
- 機密情報を気にしなくて良い
「見られる意識」があることで記憶に残りやすい
個人で完結する勉強は、どうしても記憶に残りにくいですし、質も低くなる傾向があります。
一方で、社内の人に見られる前提で勉強内容をまとめると、知識の定着につながるだけでなく、「有用な物を作る」という意識が働くため、質も高くなるんですよね。
まとめた情報自体が役に立つので、勉強内容が個人に留まらず会社の利益になるのもポイントです。
質問される
私は勉強内容をまとめて、チーム内でメルマガとして発信しています。
内容は、読んだ論文や教科書のまとめであったり、論文情報を利用した研究アイディアだったりします。
メンバーにとっても重要な資料となるので、発信内容について質問されることも多いです。
質問されると、自分の理解があいまいだった部分が浮き彫りになるんですよね。
改めてその質問に回答するために調査することで、知識がより深いものになります。
機密情報を気にしなくて良い
後述するように、技術ブログで勉強内容を発信するのも良い方法です。
しかし、ブログでは会社の機密情報を発信することはできません。
自分の仕事に関わる勉強内容を発信できないため、「仕事に生かす」という観点ではブログは良くない方法です。
一方で、社内チームだけで展開するのであれば、事業に直結したアイディアを含めて発信することができます。
研究テーマの立ち上げなど、仕事を意識した勉強をすることがこの記事の目標ですから、社内での展開がメリットがあり、おススメです。
勉強内容のまとめ方
例えば、論文であれば、タイトル、要約、研究内容の重要性、実験方法などをまとめます。
追加で、どうすれば今の仕事に生かすことができるかをコメントすれば、良いまとめになります。
ポイントはフォーマットを使ってまとめること。
実際やってみると気づきますが、勉強した内容をまとめるのは、非常に負担の大きい作業です。
英語で書かれた文献内容を理解し、解釈して、事業への応用方法を考えて・・・という作業で本来行うべき仕事を行えなくなるのでは本末転倒です。
そこで、私は毎回決まった「まとめ方」に統一することで作業負担を減らしています。
構成がわかりやすくなるので、読む側にとっても負担が少ないというメリットもあります。
まとめ方の詳しい方法は以下の記事が参考になります。
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参考【研究開発職が実践】大量に読むための論文メモフォーマット
続きを見る
ブログに書くこともおススメ
アウトプットするという点で、ブログに学んだことを書くのもおススメです。
もちろん、機密情報に触れる内容は書けないことは注意。
とはいえ、公知の情報を自分の解釈を加えてまとめたり、教科書のレビューをするのは深い学びにつながります。
SNSを利用すれば、記事に対するコメントももらえて、モチベーションアップにもつながります。
本業の勉強をしてみよう
企業研究者の勉強法を解説しました。
資格勉強なども重要ですが、実務に直接かかわりのある内容を学ぶことがもっとも効果があります。
そのためには、インプットとアウトプットを両方行うことが重要です。
ぜひこの方法を参考に本業の勉強をしてみてください。