新入社員にとって重要な仕事の一つが、日報を書く事です。
その日の仕事の振り返りをして、個人の成長につなげるためのツールとなります。
化学メーカーで研究開発職に就いている私、岡本も1年目時に日報を書き、自身の成長につながりました。
また、私はチューターとして、若手社員の日報を見る立場にあります。
日報を正しく運用できている新入社員は、業務を覚えるのも早く、現場で活躍しています。
一方で、日報の書き方を理解していない、良い日報を書けない新入社員は、成長速度も遅いと感じています。
良い日報を書くことが、仕事の活躍につながるのです。
この記事では、製造業研究開発職の観点から、新入社員に守ってほしい日報の書き方を解説します。
この方法を実践することで、新入社員のうちから職場で活躍できる人材となることができます。
また、大学の研究室で日報を書く必要がある学生さんにも、読んでいただきたい内容です。
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参考化学メーカー1年目が学ぶこと【3つのポイント】
目次
日報を書く目的
日報作成の目的は、日々の業務を振り返り、改善策を立てて実行する事です。
意識的にならなければ、日々の業務は、何となくやり過ごしてしまいます。
日々の経験を文章化する事で、自覚的に業務を振り返る事ができる様になります。
私は、その週に日報に書いた事を金曜日にまとめ直して、翌週の目標を設定していました。
例えば、ある実験操作に時間がかかり、作業効率が落ちているという問題が1週間のうちに起きたとします。
その作業を効率的に行う方法を考え、その操作通り実行できたか翌週チェックするということを繰り返し行いました。
日報を書く事で、研究開発業務の振り返りポイントが自動的に設定されます。
日報を起点にして、改善プロセスを回しましょう。
研究開発職における日報
研究開発職の日報では、データに基づいた文書を書く事が重要です。
他の職種においてもデータを記入する事はもちろん大切ですが、普段からデータを扱う事が多い理系職にっては欠かせません。
新人にとって日報の記入は、文書作成練習の意味合いもあります。
研究開発職ではメールや報告書の作成、特許、論文執筆などで文書作成の機会があります。
特に報告書や論文など、研究開発職が書く文書はデータに基づく記述が不可欠です。
日報で練習を積み重ねることで、データから考えて文書作成するという研究開発職に重要な習慣が身に付きます。
日報の書き方
日報には、決まった書き方があります。
この書き方に沿う事で、書いても成長につながらないという日報の失敗を防ぐ事ができます。
日報に書くべきことは、3つあります。
- 事実・データ
- 解釈
- 次の行動・改善策
事実・データを書く
日報では事実、データをまず書きます。
例えばその日に行った実験とその結果です。
自分の考えと事実は区別して書く事が重要です。
例
- 工程Aの反応を行い、収率は60%だった。
- 化合物BのHPLC分析を行った。
- 報告書作成を行い、実験項部分を完成させた。
解釈を書く
結果から、実験結果は目的に合致していたのか、このデータから何が言えるのかを書きます。
反応の収率であれば、この工程でその収率であればOKなのか、改善の必要があるのか。
純度は目標値を超えているのか、などです。
解釈が必要がない場合は、あえて書く必要はありません。
例
- 目標収率は75%であるため、さらなる検討が必要。
- 化合物Bの純度は基準値を満たしている。
改善点、次の行動を書く
実験結果を評価した後、次の行動を書きます。
その日の実験に問題がある場合は、改善策を書きます。
例
- 異なる配位子を用いて反応を行い、収率を決定する。
- 分析Cを行う。
- 上長への確認を行う。
研究開発職の日報:具体例
私が実際に読んだ「悪い日報」を題材に、研究開発職に書いてほしい日報を紹介します。
解決策が具体的ではなく、意気込みのみが書かれている
改善策に本人の気持ち、意気込みのみが書かれている場合があります。
悪い例
- 資料提出を忘れていた。次は忘れないように気を引き締める。
ある失敗に対して、次からは気をつけるようにする、気を引き締める、などと書かれている日報を見る事があります。
これは具体的な行動が書けていないという点で、悪い日報です。
良い例
- 資料提出を忘れていた。対策としてチェックシートを導入する。そのシートを上長に毎週提出する。
上長も巻き込んだ具体的解決策を書いた、良い例です。
私が上司であれば、この新人に仕事を任せても安心だと思えます。
トラブルが起きたとき、具体的な改善案を提案できる人材は貴重であるためです。
データが不足している
データの情報が不足していたり、具体的でない日報もよく見ます。
自分の解釈を、データと混同していることもあります。
悪い例
- ある実験作業に時間がかかり過ぎたので、次は短くできる様に工夫する。
「ある実験に時間がかかりすぎた」と書いてありますが、実際の時間は何時間だったのでしょうか。
1時間なのか、2時間なのかを書くことが必要です。
「時間がかかりすぎた」というのは本人の解釈であり、実際は適切な所要時間だった可能性もあります。
良い例
ある実験作業に2時間を要した。事前準備が不足していたことが原因。前日に準備をし1時間で作業が終わる様にする。
良い例では「事実→解釈→改善策」の順番に書くことができています。
データ、達成すべき目標も具体的であり、研究開発職らしい文章です。
日報で成長のツールとして使おう
新人研究開発職に守ってほしい、日報のルールを解説しました。
製造業の多くの新人社員が日報を書きますが、研究開発職にも重要なツールです。
一方で、良い日報を書けない新入社員も多くいます。
日報を起点に「ふりかえり」を行い、1年目から活躍できる社員を目指してください。