メーカー技術職の働き方

【研究開発職が実践】大量に読むための論文メモフォーマット

岡本さん
・読んだ論文をどうやってまとめたら良いか知りたい!
・もっと速く論文を読めるようになりたいな


この記事からわかること

  • 読んだ論文のまとめ方
  • 速く論文を読む方法

 

(@okamotobiblio)は化学メーカーで研究開発職として働いています。

仕事をしていくうえで、論文や特許は欠かすことができない資料です。

論文を参考に研究を組み立てたり、新しい仕事の提案をしたりもします。

 

学生の頃から論文をどう読み、どう整理するかについて考え、実践してきました。

学生時代に比べると論文を読む時間自体はどうしても減ってしまうのですが、だからこそ企業研究者として効率的に読むことができるようになってきてもいます。

そこで今回は、私が実践している論文・特許の読み方と整理の方法を、具体的な論文を題材に解説しました。

 

この記事で紹介するフォーマットを使うことで、多くの論文を速くことができるようになります。

また、読んだ論文を仕事や研究に生かすことができるようになります。

 

英語論文を読むことに抵抗があるのであれば、以下の記事が参考になります。

参考有機化学論文を読む 覚えておきたい英語例文10個

 

 

論文メモの作成に至った背景

論文メモに記入することは4点です。

ポイント

  1. タイトル
  2. 研究内容
  3. 新規性・進歩性
  4. 気になったこと

この4点を記入することを記入することで、論文情報の整理に役立ちます。

 

なぜこの4点を書くことに私が至ったのかについて解説します。

 

論文を読む目的は何か?

私の場合、論文を読む目的は2つあります。

  • 案件に関わる論文を読む
  • 最新研究のチェックをする

論文メモはどちらの目的にも有効です。

 

案件に関わる論文

新しい案件の立ち上げを行う際、多くの論文や特許などの文献を調査します。

一つ一つの文献情報を覚えておくことは不可能ですので、読んだ文献を何らかの方法でまとめる必要があります。

 

その際に有効なのが、今回紹介するフォーマットです。

 

私は新たなプロジェクトで文献を調査する際、必ずこのフォーマットを利用しています。

このフォーマットを利用することで、文献の整理ができ、研究企画の立案がスムーズになります。

 

最新研究のチェック

メーカーの研究開発担当者にとって、最新研究のチェックをすることは欠かせません。

新たな技術を取り入れることで解決できる問題が多く存在するためです。

 

また、例えば顧客とやりとりしているとき、「新規技術の習得が必要だが、課題解決ができないか」と聞かれることもあります。

最新技術の動向をチェックしていれば、このような顧客からの問いにも答えることができます。

 

私は毎朝最新論文のチェックを行っていますが、その際に今回紹介するフォーマットを利用して情報をまとめています。

実際に、この時まとめた内容を職場での研究に生かした経験があります。

 

論文メモ作成で重視すること

論文メモ作成において重要なことが2点あります。

  • あとで参照するために必要な情報がまとめられていること
  • 簡単に完成できること

必要な時に備えて、情報をストックすることが目的ですので、見返したときに十分な情報が書かれている必要があります。

一方でまとめる労力が多すぎると、大量に読み知識のストックを厚くすることができません。

 

私はこの条件を満たすために、内容を定式化したフォーマットを使っています。

 

毎回決まった形式のメモを作ることで、メモ作成の負担を下げ、かつ毎回必要最小限の情報をまとめることができます。

また、決まったフォーマットを使うことで、検索が行いやすくなります。

私はGoogle docsを使っていますが、検索がしやすく、種々の端末で使用できるサービスであれば問題ありません。

 

参考図書

読んだ論文をフォーマットに従ってまとめる、という方法は、「外資系コンサルの知的生産術」という本に書かれている内容を参考にしました。

 

ベストセラー作家で元コンサルタントの山口周さん著作の新書ですね。

気になるフレーズを抜き出してストックすることが勧められています。

 

本書自体はコンサルの働き方について書かれている本ですが、他の職業にも応用できる考え方が多く掲載されていて非常におススメです。

特に研究職とコンサルの働き方って、本当に似ていることに気づくと思いますよ。

 

フォーマットに書くことは4つのこと

私が利用しているフォーマットに書く内容は4つです。

 

(1)タイトル

まずはタイトルを記入します。

論文の1ページ目を見れば、すぐに埋めることができますね。

タイトルだけでなく、筆頭著者、雑誌名、出版年も書いておくと見返す際に便利です。

 

(2)研究内容

研究内容をまとめます。

Abstract、Conclusionの内容をまとめることが多くなると思います。

1~2文程度の簡単な文章でまとめましょう。

 

「研究内容」をまとめた例です。

「研究内容」の例

  • 無保護グルコースの立体・位置選択的グリコシル化を可能とする安価な触媒を開発した。
  • ~という新た機能を有するタンパク質を発見した。
  • 5G技術の改善に有効な~という機能を持つ新規分子を創出した。

(3)新規性・進歩性

先行研究と比較したときの新規性や、科学的な価値について書きます。

論文・特許のキモの部分ですので、このフォーマットにおいて最も重要な項目です。

 

文献をまとめる手法は多く知られていますが、新規性・進歩性に着目している点が、私が使用しているフォーマットの特徴的な点です。

特に企業においては、技術の新規性・進歩性が文献検索において重要な情報となるためです。

研究分野でのインパクトなども書いておくと便利ですね。

私は2~3文程度でまとめています。

 

新規性・進歩性の記入例をまとめました。

新規性・進歩性の例

  • 無保護グルコースの位置・立体選択的グリコシル化を達成する触媒は今まで非常に高価であった。また、その適応範囲は限られていた。本触媒は安価で適用範囲が広いことが特徴。
  • ~という機能を有するタンパク質は、存在を予想されていたが発見はされていなかった。本研究では新たな分析手法により、このタンパク質を発見した。
  • 5G技術では、~においてコストが高いという課題がある。今回創出された分子はこの課題を大きく改善する可能性がある。

(4)気になったこと

論文を読んで気になったことや、この論文を読んだ動機について書きます。

 

また、後々検索をすることを想定し、検索ワードになりそうな単語を使ってまとめることも重要です。

Evernoteだと、タグ付けしておいても良いですね。

 

「気になったこと」の記入例をまとめました。

「気になったこと」の例

  • 無保護グルコースのグリコシル化に興味があり、本文献を読んだ。今行っている案件に適用できる可能性がある。
  • 今回発見されたタンパク質を利用することで、新たなビジネスに展開できるのでは?選択性が気になる。
  • 顧客が興味を持っていた分野。今のテーマに直接は関りはないが、提案次第で利用する可能性あり。

 

論文メモの具体例

今回は、具体例としてAngewandteでオープンで読むことができるこちらの論文を題材に論文メモを作成しました。

D. Takahashi, T. Inomata, T. Fukui, Angew. Chem. 2017, 129, 7911-7915

 

論文メモはできるだけ速く作成したいので、論文全文を読む必要はありません。

もちろん気になる内容であれば読むこともありますが、フォーマットを完成させるためには、タイトル、Abstract、Conclusion、いくつかのFigureを読めば十分です。

それではまず、タイトルを読んでみましょう。

AJIPHASE®: A Highly Efficient Synthetic Method for One‐Pot Peptide Elongation in the Solution Phase by an Fmoc Strategy

 

One-Potによるペプチド伸長法で、液相Fmoc法による、非常に効率的な合成法を開発した、ということのようです。

普段からよく読む分野だと、タイトルだけでも大まかな内容をつかむことができます。

 

次にAbstractを読んでみましょう。

Abstract

We previously reported an efficient peptide synthesis method, AJIPHASE®, that comprises repeated reactions and isolations by precipitation. This method utilizes an anchor molecule with long‐chain alkyl groups as a protecting group for the C‐terminus. To further improve this method, we developed a one‐pot synthesis of a peptide sequence wherein the synthetic intermediates were isolated by solvent extraction instead of precipitation. A branched‐chain anchor molecule was used in the new process, significantly enhancing the solubility of long peptides and the operational efficiency compared with the previous method, which employed precipitation for isolation and a straight‐chain aliphatic group. Another prerequisite for this solvent‐extraction‐based strategy was the use of thiomalic acid and DBU for Fmoc deprotection, which facilitates the removal of byproducts, such as the fulvene adduct.


D. Takahashi, T. Inomata, T. Fukui, Angew. Chem. 2017, 129, 7911-7915

C末端に長鎖アルキル保護基を用いていた従来のAJIPHASE法を改善した、と書いてあります。

そのために、枝分かれしたアルキル鎖を用いたのですね。

 

このように、大雑把に内容をつかめば問題ありません。

後から必要になったときに深く読めば良いのです。

次に、Figureに注目しつつ、Conclusionを読みましょう。

In conclusion, we have developed a simple, efficient, and widely applicable peptide synthesis method based on the branched anchor compounds 5 or 6 in combination with a new Fmoc deprotection system. This process afforded pure peptides, even for long or hydrophobic peptides, and can be readily scaled up. Solvent evaporation and dehydration are not necessary during the workups for the following coupling steps, and only a limited amount of solvent is added in each reaction. Thus the total solvent consumption is significantly lower than for SPPS. We are confident that these advantages will render the AJIPHASE approach a useful LPPS method even on large scales.


D. Takahashi, T. Inomata, T. Fukui, Angew. Chem. 2017, 129, 7911-7915

Abstructの内容に加えて、合成スケールを上げたときにAJIPHASE法はより効果的な手法になることが書かれています。

これだけでもフォーマットを埋めることはできますが、Figureもチェックしましょう。

 

例えば、Figure 3.にはアンカーとなる化合物の構造がかかれています。

化学の場合、構造式が重要なので、私は画像を貼り付けています。

このような構造式が書かれた図をメモに貼っておくと、あとあと見直すときにも楽ですね。

 

それでは、フォーマットを埋めましょう。

(1) AJIPHASE®: A Highly Efficient Synthetic Method for One‐Pot Peptide Elongation in the Solution Phase by an Fmoc Strategy

D.Takahashi, Angew. 2017

(2) C末端に枝分かれしたアルキル鎖を持つアンカーを導入することで、効率的にFmoc法における液相によるペプチド合成をを開発した。

(3) 従来の直鎖アルキル鎖のアンカーと比べ、溶解度が向上し、操作性も向上した。

この方法はペプチド合成をスケールアップする上で有効な手法である。

(4) ペプチド合成のスケールアップについて興味あり。

具体的にどの程度までのスケールアップが可能なのか?

スケール次第で利用できる可能性あり。

 

少ないと感じるかもしれませんが、この程度で十分です。

記憶にも残りますし、例えば「ペプチド」「スケールアップ」などで検索すれば、この論文を見つけ出すことができます。

 

この分量だと15分程度でメモ作成が可能です。

15分であれば、忙しくて他にやらなければならない作業があっても、継続的に論文メモ作成続けることができるのではないのでしょうか。

 

まとめ

「論文メモ」は大量にストックしておくことが大切です。

 

できるだけまとめ作業の負担を下げて最低限の情報をまとめるためにも、論文メモフォーマットが有効です。

ぜひ、ここで紹介した論文メモを作成して、企業や大学で活躍してください。

 

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