この記事からわかること
全合成研究室からの就職先
私(@okamotobiblio)は全合成研究室から、修士卒で化学メーカーに就職しました。
研究室での経験を生かしたいと考えていましたが、全合成の経験を生かした就職ができるかどうか不安がありました。
しかし、先輩の就職先や、就活で出会った人から得られた情報を知ることで、安心して就活ができたという経験があります。
この記事では、私の研究室同期や、学会などで知り合った全合成研究室出身者が、どのような企業に就職したかを紹介します。
全合成経験者が、どのような企業に求められているかの参考になると思います。
目次
全合成経験者が持っているスキル
天然物合成研究で得た知識や経験は、就活をする上での武器になります。
全合成経験者の強みは3つあると思います。
ポイント
- 合成知識
- 科学知識
- 研究経験
合成知識
全合成経験者は、他の有機化学研修室と比べても、「化合物をつくる」ということに関しては伸び抜けた能力を持っています。
目的物の合成経路を立てる能力が高いですし、色々な反応を経験していることも強みとなります。
所属している研究室の中では、優秀な同期や先輩がいて、「自分はまだまだ」と思うかもしれません。
しかし、就活生全体から見ると、全合成出身者の合成力はトップクラスですので安心してください。
実際、私の会社の人の中でも、合成の実力が高いのは全合成出身者です。
様々な反応の経験、目的物を効率的に作るスキルなどは、就活でもアピールポイントになります。
科学知識
合成系研究開発職以外の就職を考えている人であっても、メーカーやそれに近い企業であれば、科学的知識がアピールポイントになります。
この場合、技術営業や化学商社、化学系以外のメーカー研究開発職などが就職先の候補となります。
全合成の研究をしていると、化学の知識は自然と身に付きますし、アッセイまで関わる研究も多いので、バイオの基礎知識を学んだ人も多いのではないでしょうか。
合成した化合物の分析、特に解析結果から不純物を同定するなどの分析技術に優れている人も多いでしょう。
これらの総合的な科学的知識を評価する企業は多くあります。
また、新卒であれば企業はポテンシャルで採用します。
企業での仕事内容と、学生自体での研究内容が異なっていたとしても、科学に対して真面目に学んだ経験やその過程をアピールすれば、企業は就活生を評価します。
研究経験
あらゆる企業で、PDCAを早く回すことができる人材が求めています。
研究はまさに、PDCAを回して成果を出していく作業です。
- 天然物合成の合成ルートを作成する
- 必要量を見積もって、原料合成を行う
- 上手くいかない反応の副生成物を分析する
- 反応条件を検討する
- そもそも違うルートに変更する
など、全合成経験者の計画→実行→評価→改善の連続です。
研究開発職や、科学に関わらない仕事においても、全合成の研究経験を生かすことができるのです。
面接で研究でどのようにPDCAを回したかを説明すれば、大きなアピールポイントになります。
全合成出身者の就職先
私は合成が好きだったので、私の周りの知人も合成系の仕事をしたい人や、少なくともその知識を使う企業への志望が多かったです。
一方で、全く違く職業に就いた人も数人ですが存在しています。
ここでは、私の周りの人が就職した、5種の企業を紹介します。
- 化学メーカー
- 製薬企業
- 食品メーカー
- 化学商社
- IT系
化学メーカー
私の知人の中で、最も多い就職先は化学メーカーです。
素材メーカーの場合、高分子を扱うことも多く、必ずしも天然物的な合成を行うわけではありませんが、合成の知識は役立ちます。
また、スマホの液晶などに使われる有機EL分野など、電子素材分野で有機合成に精通した人材は求められており、全合成経験者が採用されたのをよく見ました。
農薬や香料の合成を行う企業もおススメです。
これらは化合物自体が天然物合成ターゲットに近く、全合成経験を生かすことができます。
農学部に限らず、全合成出身者なら就職先候補に入れたいところです。
私自身、農薬メーカーを就職先候補に入れておけばよかったと、就活後半になって公開した経験があります。
また、多くの化学メーカーは理系総合職として採用されます。
研究開発以外にも、製造により近い部署や、調達や知財など、科学の知識が必要な部署に配属される可能性もあります。
特に大きな会社であるほど配属先の希望が通るのは難しくなるので、将来のキャリアを見据えておく必要はありそうです。
企業の研究者について、イメージができないのであれば、こちらの記事もおススメです。
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参考【書評】就活生おすすめ本「新 企業の研究者をめざす皆さんへ」
製薬企業
全合成の研究室出身者のなかでは、製薬企業の人気は高いです。
製薬企業に就職したいから、全合成研究室に入ったという人も多いかもしれません。
実際、全合成ターゲットは、製薬企業が扱う化合物に非常に近く、親和性は高いです。
一方で、低分子医薬品の開発が少なくなってきているのは事実であり、採用自体も少なくなっていくことは予想されます。
実際、合成系の研究者が子会社に転属になった話はよく聞きます。
過去には修士卒で入社する人も多かったですが、最近は博士卒が前提になっています。
今後もこの傾向が変わることはないでしょう。
製薬企業を目指すのであれば、博士進学を想定する必要があります。
大きな分類として、合成系であれば医薬品候補を探索するメドケム系と、開発品をコストを抑えて合成する研究を行うプロセス化学系の二つのどちらかに配属される可能性があります。
全合成経験者であれば、どちらの分野も対応できますが、バイオの知識も必要であるメドケム系は薬学系が多いのかなという印象はあります。
しかし、理工、農学など必ずしも薬学系以外の人が就職できないわけではないので、ぜひチャレンジしてください。
プロセス化学は、合成を追求することができるので、有機化学が好きな人であればおススメの職種です。
食品メーカー
農学部などで全合成研究を行っていた人は、食品メーカーへの就職を希望する人も多くいました。
社内で有機合成をすることは少ないと思いますが、化学の知識は大きく役に立つと思います。
また、食品にかかわる企業は、必ずしも良く知られているBtoC企業だけではありません。
食品メーカーに素材を提供する食品素材の企業も多く存在します。
大学での研究が好きだった人にとっては、食品素材の方がより内容が近く、向いているかもしれません。
化学商社
研究開発ではありませんが、化学の知識を生かせる分野として、化学商社に就職した知人もいました。
例えば、製薬企業は、原料や中間体化合物を海外企業などから入手しています。
この際、化学商社が仲介することが多いです。
化合物の構造などから、どの受託企業が強みを持つか考察し、どこに発注すればよいかの判断が必要とされ、この際合成の知識を生かせます。
海外との取引となるので、英語が得意なのであれば、おススメの就職先です。
女性の就職も多いかなという印象もあります。
IT系
化学の知識を直接生かすことはできませんが、就職先としては比較的多いです。
IT系の市場は拡大していることもあり、給与面でも化学メーカーより魅力的なようです。
化学メーカーは僻地の工場や部署に配属される可能性がありますが、IT系は都心にオフィスがあったり、テレワークに柔軟に対応可能な点もメリットです。
田舎では働けないな、という人にはおススメだと思います。
IT系は進展が早く、最新技術を学ぶために、勉強を続けていく必要があります。
この点では研究活動と似ている部分があり、全合成研究の経験がアピールポイントになります。
全合成研究室からも多様な企業に就職している
全合成経験者の強みと、私の周りの知り合いの就職先を紹介しました。
化学メーカーに就職した人が多いですが、それ以外にも経験を生かした様々な仕事に就いています。
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