ビブリオバトル・読書会

【ビブリオバトル講座】小説の発表方法 「抽象化する」

岡本さん
小説をビブリオバトルで紹介したい。チャンプ本をとるためのポイントはある?

 

この記事からわかること

  • ビブリオバトルで小説を紹介するテクニック
  • 小説紹介の例文

 

ビブリオバトルの発表で、小説は非常に人気です。

私が運営する岡本ビブリオバトルでもそうですし、全国大会でも、チャンプ本の多くは小説です。

 

一方で、小説の紹介方法は工夫が必要です。

 

本来、数時間かけて読む小説の面白さを、5分で紹介しなければなりません。

ストーリーを知らない人に、「読んでみたい」と思ってもらうには、いくつかのテクニックが必要です。

 

(@okamotobiblio)はビブリオバトルに10年間参加し、小説でも多くのチャンプ本を獲得してきました。

 

小説には、特有の紹介方法があります。

気を付けて紹介しないと、印象に残らない発表になってしまいます。

 

この記事では、ビブリオバトルで小説を紹介する際のポイントの1つである「ストーリーの抽象化」について解説します。

さらに、このポイントを使って考えた、私のビブリオバトルの発表原稿を公開します。

 

今回紹介する方法を真似ることで、簡単に小説発表の原稿を作ることができます。

 

 

ストーリーを抽象化する

 

小説紹介のポイントは、物語を抽象化して、自分なりの解釈をしてみることです。

 

抽象化して発表するメリット

抽象化して発表するメリットは、オリジナリティのある発表にすることができる点です。

 

小説の発表で行ってしまいがちな失敗は、ストーリーの紹介だけをしてしまうことです。

たしかに、とても魅力的な小説であれば、物語のあらすじを伝えるだけでも面白さが伝わるかもしれません。

 

しかしその発表は、本の背表紙に書いてあるあらすじや、Amazonのレビューと大差ないのではないでしょうか。

ビブリオバトルの面白さは、本を読んだ人が感じた面白さを、その人自身が目の前で語ってくれる事だと私は思います。

 

発表者の感想や解釈があってこそ、発表本を読んでみたくなるのです。

 

ストーリーを抽象化するためには、物語を自分なりにかみ砕いて理解したり、視座を高めて読んだりする必要があります。

この過程が、オリジナリティのある発表原稿づくりを促してくれます。

 

紹介する小説を抽象化すると、どのように解釈できるか?と考えて、発表原稿を作ってみましょう。

 

抽象化の例

岡本さん
抽象化と言われても、いまいちピンとこない。例を教えて!

 

小説を抽象化すると言っても、経験がないと、どうすればよくわからないと思います。

おとぎ話を例に、抽象化の例を説明します。

 

・桃太郎

→目標を掲げて、仲間を集めて旅をする冒険物語

・ウサギとカメ

→コツコツと努力することの重要性

・浦島太郎

→楽しい時間は早く過ぎ去っていく

 

具体的なエピソードから何を読み取れるのか、考えてみましょう。

 

もちろん、すべての小説の内容を抽象化できるわけではありません。

しかし、オリジナリティのある解釈を生み出す、つまり印象に残る発表にするためにはおススメの方法です。

ぜひチャレンジしてみてください。

 

小説紹介の原稿

実際に私が作成した原稿を解説します。

今回は、原田マハの「楽園のカンヴァス」を選びました。


 

原稿は、1-3-1の法則にしたがって作成しました。

1-3-1の法則とは、発表の導入を1分、中盤を3分、まとめを1分で想定すると、原稿が作成しやすくなるという法則です。

以下の記事で詳しく解説しています。

参考【例文あり】ビブリオバトルの発表原稿を準備するための4ステップ

 

導入の例文

1分程度で、本の概要、発表者のキャラクター、超一言を伝えます。

参考【超一言】 ビブリオバトル最後のまとめ方を解説します

 

原田マハさんの「楽園のカンヴァス」という小説を紹介します。

19世紀から20世紀に活躍したフランスの画家、アンリ・ルソーを題材にした、美術ミステリーです。

 

【本の概要を伝える】

アンリ・ルソーをご存じ無い方もいらっしゃるかもしれません。

この本の表紙に描かれているのが、ルソーの代表作である「夢」という作品です。

小説の作者、原田さんは、美術館のキュレーター、学芸員のことですね、の経験があり、多くの美術小説を書かれています。

 

【発表者のキャラクターを伝える】

私自身、美術館に行って作品を見るのが好きで、旅行した際は、ほぼ確実に現地の美術館、博物館で美術鑑賞をしています。

それもあって、私は原田さんの作品が好きで、原田さんのアート小説をよく読んでいます。

この「楽園のカンヴァス」は、原田作品の中でもピカイチの美術小説で、私もとても好きな一冊です。

 

【質問する】

この作品の面白さは何か?

 

【超一言を伝える】

それは「美術鑑賞をしているかのような物語」だということです。

 

展覧会で作品を楽しんでいるかのように、小説は進んでいきます。

そして、アートを楽しんでいると、ミステリの謎が解けていくという仕掛けになっている点も、とても面白いです。

 

【誰に読んでほしいかを伝える】

美術鑑賞が好きな方、ミステリ小説好きの方には、ぜひ読んでいただきたい本です。

 

中盤の例文

今回は少し長めに、3分30秒程度を使います。

ここで、本記事のポイントである、「抽象化」が登場します。

 

【シンプルなあらすじ】

主な登場人物は2人です。

主人公のティムはニューヨーク近代美術館の駆け出し中のキュレーターで、ルソーの研究者でもあります。

 

対するもう一人の主人公は、日本人研究者早川織絵。

彼女も画家ルソーの若手研究者です。

詳細な調査を行うことから、研究者というよりは探偵だと噂されています。

 

この二人はルソーの未発表作品について、本物か偽物かを判定してほしいという依頼を受けます。

この作品が本物なのか偽物なのかかを推理すること、これが物語の筋です。

 

【超一言】

「楽園のカンヴァス」の面白さは、美術鑑賞を楽しむプロセスで物語が進行することです。

 

【抽象化ストーリー(1)】

アート作品を楽しむ際は、作品を初めて見たときの印象が大切ですが、この小説でも重要であると描かれています。

 

ある日、主人公ティムに奇妙な手紙が届きます。

手紙の差出人は、バイラーという大富豪で、伝説的なコレクターでもあります。

大富豪バイラーは未発表のルソー作品を持っており、その作品が本物であるか、偽物であるかを鑑定してほしいという内容でした。

 

「未発表の作品を見ることができる」

これは美術の研究者にとって、この上ない喜びなんですね。

ティムは興奮して、バイラーのいるスイスに向かいます。

 

スイスの館で、主人公ティムは依頼人のバイラー、そしてもう一人の主人公、織絵と出会います。

そこで、ティムはルソーの作品と対面するんですが、それにとても驚くんです。

鑑定依頼された絵が、ティムが働くニューヨーク近代美術館が所属するルソーの「夢」、この表紙の作品ですね、とそっくりだったんです。

 

なぜニューヨークにある作品がスイスにあるのかと、ティムは自分の目を疑います。

実際は、少しだけ描かれている女性のポーズが違うのですが、これが何を意図しているのか、というのがミステリのポイントです。

 

実は、ティムはこの未発表作品を見た瞬間に、本物であると確信します。

筆致、色使い、サインなどの根拠もありますが、何よりもの証拠として本物しか出せない雰囲気を感じとるのです。

文中では「一瞬にして作品世界に吸い込まれてしまった」と表現されているのですが、まさに運命の出会いのようなものだったのだと思います。

 

【抽象化した解釈(1)】

この場面を読んで、研究者が第一印象を重視するというのは、面白い描写だなと私は思いました。

作品が由緒正しいものでであると歴史的書物に書かれているとか、化学的な手法で制作年が分かっているということが、本物か偽物かを見極めるのに重要だと考えていたからです。

しかし、この場面ではティムは即座に本物であると確信します。

学芸員をしていた原田マハさんが描写しているのですから、実際に第一印象を重要視しているのだと思います。

 

私は第一印象で本物か偽物かを見分けることは、もちろんできません。

ですが、見た瞬間の「好き」か「嫌い」かであったり、何を感じたかだったり、作品から受ける印象にもっと自覚的になって良いのだと思いました。

 

【抽象化ストーリー(2)】

美術鑑賞の2つ目のポイントは、作品とじっくり向き合うという事です。

 

どうやってルソー作品の真贋を見極めるのか。

外部の人や手段は使えません。

 

バイヤーはある古い本を7日間、主人公2人に毎日少ページずつ読ませます。

そして7日後にその本は読み終わり、鑑定結果をバイヤーに伝えるのです。

その本ではルソー、そしてピカソが登場するオリジナルの物語が描かれていて、鑑定のヒントになっています。

 

この物語自体がまた、面白いんですね。

ルソーの人生、貧困であったり、運命のモデルに出会ったり、熱狂や落胆が生々しく描かれています。

 

ルソーの人生を追体験してから、同じ作品を見直すとミステリのヒントが見つかる。

作者を知ることが、作品の価値を知るために必要なのだと言えると思います。

 

【抽象化した解釈(2)】

これも美術鑑賞のプロセスと似ていますよね

展覧会では第一印象で作品を見た後は、近づいて筆遣いを見たり、作品紹介の文章を読んだりします。

作者の人生に没入してから作品を見直すと、なぜその表現方法に至ったかを理解できた感覚を得ることもあります。

作者の人生を知ること、そして改めてよく観察することこれがアート作品の楽しみ方なのだと思いました。

 

まとめの例文

中盤で時間を多くとりましたので、今回は20~30秒程度で簡単にまとめます。

超一言を繰り返すこと、誰に読んでほしいのか、この2点は忘れずに。

 

それではまとめます。

美術ミステリである、原田マハさんの「楽園のカンヴァス」を紹介しました。

 

【超一言を繰り返す】

ルソーの作品は本物なのかを推理するミステリですが、その過程は美術鑑賞と似ている点がとても面白いと思いました。

まさに、「読書で美術鑑賞を楽しむことができる一冊」です。

 

【誰に読んでほしいが伝える】

美術館が好きな人、ミステリ好きには是非読んでいただきたいです。

ありがとうございました。

 

ビブリオバトルに参加しよう

小説の紹介技術の1つである、「抽象化する」について解説しました。

 

小説をビブリオバトルで紹介する場合は、あらすじで終えるのではなく、自分の解釈を入れるのがポイントです。

そのためには、物語を抽象化してとらえるのがコツとなります。

ぜひ、この方法を実際のビブリオバトルでも試してください。

 

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