この記事からわかること
- 論文を読むために、単語と例文を覚えるメリット
- 有機化学の論文を読むのに便利な英語例文10個
理系の大学で4年生になると、研究室に配属されます。
その際の一つの関門が、英語論文を読むことです。
化学系の大学出身である私(@okamotobiblio)も、研究室配属後に初めて英語論文を読みましたが、読解にとても苦労しました。
英語論文を読むハードルを下げる一つの手段が、頻出する英単語を覚えることです。
頻出単語を知っていることで、英語論文の理解が楽になります。
この記事では、化学メーカーで研究職として勤める私(@okamotobiblio)が、専門である有機化学の論文を読むために、覚えておきたい英単語と例文を紹介します。
有機化学系の研究室に所属する大学生が勉強すれば、論文をスムーズに読むために役立ちます。
これらの単語が、単語帳や本でまとめられていれば非常に便利ですが、現状、その様な書籍はありません。
この記事を参考に、1~3年生のうちに例文を覚えておけば、研究室配属後すぐに雑誌会などで活躍できるはずです。
なお、読んだ論文のまとめ方については、以下の記事が参考になります。
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参考【研究開発職が実践】大量に読むための論文メモフォーマット
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目次
研究室では英語論文が欠かせない
理系の大学生は4年生になると、卒業研究のために、研究室に配属されます。
研究室では、実験・研究の方法や、資料作成、プレゼンの方法など多くのことを学びますが、その中でも一つの関門が英語論文を読んで理解することです。
研究は世界で初めてのことをする行為です。
研究を推進するためには、過去の研究結果を参考に、研究や実験を組み立てることが欠かせません。
私も論文を読むのが苦手だった
私も大学4年生になって有機化学系の研究室配属となり、所属研究室の過去論文や、自分の研究に関する論文を多く読みました。
当時、TOEICは600点程度。
多くの理系の学生も同じだと思いますが、私は決して英語が得意ではありませんでした。
英単語の意味を辞書で調べつつ、とても苦労して読んだ覚えがあります。
一方で、今は企業の研究職として、専門に関する論文であればスムーズに理解することができる英語力が身に付きました。
その一つの要因が、専門に関わる英単語を覚えたことです。
論文に何度も登場する英語表現を自作の単語帳に書き出し、繰り返し見返すことで、単語を覚えることができました。
頻出単語を覚えたことで、専門分野であれば辞書を使わずに読むことができるようになったのです。
論文を読むために英単語を覚えるべき理由
私が学生の時は、まだまだ発展途上でしたが、現在はDeepL翻訳やGoogle翻訳など、英語から自然な日本語に翻訳してくれるサービスを使うことができます。
よくわからない表現が登場したり、専門外の文献を読むときは、実は私もよく使っています。
しかし、翻訳サービスを使うとしても、英単語を覚えることには、メリットがあります。
読むべき論文かどうか、素早く判断できる
読みたい論文であれば、翻訳サービスを使って翻訳することはできます。
しかし、その論文が読むべき価値がある論文かどうかを判断する必要があります。
論文を読むかどうか決める手順は、
- 書かれたタイトルを読む
- アブストラクトに添付されている図表を見る
- アブストラクトを読む
という流れです。
研究では毎日、多くの論文に触れる機会があります。
毎回、翻訳サービスを使用していると、時間が足りなくなります。
しかし、単語や頻出例文を覚えている程度の英語力があれば、翻訳サービスを使わなくても読むべき論文かどうかすぐに判断できるのです。
頻出英単語を使った例文10個
有機化学系の論文によく登場する英単語を使った例文を10個紹介します。
合成系の研究室に所属している4年生や、合成系の研究室を志望している学部生は、例文を覚えてしまいましょう。
生成物
例文
The desired product was obtained in five steps and 40% overall yield.
訳:目的生成物は5工程、総収率40%で得られた。
生成物は「product」で表現します。
副生成物であれば「byproduct」ですね。
収率の表現に 「in 数値% yield」を使うことは多いので、ぜひ覚えておきましょう。
反応仕込み
例文
To a solution of the starting material in dry DCM was added the reagent, and the solution was stirred for 1 hour at room temperature, giving the solution a yellow color.
訳:原料の脱水ジクロロメタン溶媒に対して、試薬を添加した。溶液を1時間攪拌することで、黄色溶液を得た。
実験項にで、よく見る例文です。
実験手順が、時系列の順番に書かれていることが特徴ですね。
「was added the reagent」という倒置の文法が使われています。
giving以降は、現在分詞の形が使われています、
分液
例文
The resulting mixture was diluted with water, extracted with EtOAc three times.
The combined organic layers were dried over Na2SO4 and filtered. The filtrate was concentrated.
訳:得られた混合物を水で希釈し、酢酸エチルで3回抽出した。
合わせた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥、ろ過した。ろ液を濃縮した。
3文になっているのはご愛敬です。
こちらも実験項で良く登場する表現です。
「分液操作をする」と表現したい場合、「有機溶媒で抽出する:extract」か「水で洗浄する:wash」という単語を使います。
初めての系で実験する場合は、論文の実験項を参考に実験を行います。
学部4年生は、積極的に実験項も読むようにしましょう。
精製
例文
The residue was purified by silica gel column chromatography to afford the desired product.
訳:残渣をシリカゲルカラムで精製し、目的物を得た。
シリカゲルカラムで精製することを想定した例文です。
「精製する:purify」は非常によく使う表現ですね。
文の後半に、「to afford~」とつなげて、~という化合物を得た、と表現されている文章を非常に多く見ます。
検討
例文
As a result of study , the optimized condition was found.
訳:検討の結果、最適化条件が見いだされた。
「study」と言えば「勉強」のイメージですが、「検討・研究」の意味でよく使われます。
反応検討の場合、「最適化条件:optimized condition」は非常に重要ですね。
選択性
例文
Mechanistic studies showed that the generation of the intermediates with the bulky functional group affected the regioselectivity.
訳:反応機構研究から、かさ高い置換基を有する中間体の生成が位置選択性に影響を与えることがわかった
反応の「選択性:selectivity」は有機化学の論文の重要なトピックです。
今回は「位置選択性:regioselectivity」を取り上げましたが、「立体選択性:stereoselectivity」も頻出単語ですね。
反応機構解説では、「かさ高い:bulky」置換基を持つ「中間体:intermediate」が登場することも多いと思います。
電子供与・吸引
例文
The reaction tolerates aryl rings featuring electron-donating and -withdrawing substituents too.
訳:その反応は、電子供与基、電気吸引基をもつアリール環にも適応できる。
「電子給与:electron-donating」、「電子吸引:electron-withdrawing」は反応の活性に大きく影響を与えるため、有機化学の論文にも多く登場します。
「tolerate:許容する」は少し難しい単語ですね。
今回の場合、その反応が特定の置換基を有していても適応可能であることを示しています。
構造・骨格
例文
Structurally, it consisted of a bicyclo[4.1.0]heptanone skeleton containing a cyclopropane ring bearing three main chains projecting in the same direction.
訳:構造的に、ビシクロ[4.1.0]へプタノン骨格を有し、そこに含まれるシクロプロパンの3つの主鎖は同じ方向である。
英文で立体構造を考える必要がある、難易度の高い例文です。
「構成される:consisted」、「骨格:skelton」などは、この手の文章に頻出の単語です。
実際は、論文中に構造式が書かれているはずなので、文と構造式を見比べて構造を確認します。
求核性
例文
The nucleophilic agent was needed to achieve the stereospecific displacement.
訳:求核剤は、立体選択的な置換に必要だった。
「求核性:nucleophilic」という単語を使った例文です。
求核剤を使った反応には「置換:displacement」がセットですので、両方覚えておきましょう。
求電子性
例文
The substrate with nucleophilic properties have stability and safety problems.
訳:求電子性を有するその基質は、安定性と安全性に問題がある。
「求電子性:nucleophilic」を使った例文です。
「基質:substrate」は化合物を表すときによく使いますが、論文以外では見ない表現なので覚えておきたいですね。
関連した表現では、「誘導体:derivative」、「類縁体:analogue」などがあります。
例文を暗記して論文を読んでみよう
有機化学の論文に良く登場する単語を使った、10個の例文を紹介しました。
学部生がこの例文を10個覚えていれば、研究室配属の際に、よりスムーズに論文を読むことができるようになります。
論文を読むハードルが下がれば、研究に対する熱意も湧きやすくなります。
有機化学志望の学部生は、ぜひこの10例文を暗記してみてください。
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