この記事からわかること
- 院試で志望動機を明確にしておくことの重要性
- 研究室訪問でのポイント
理工系の大学生の方は、大学院に進学する人も多い思います。
出身の大学と同じ大学院に進学する人が多数ですが、外部大学院を受ける人もいるはずです。
実際、化学メーカーの研究職として働いている私(@okamotobiblio)も、その1人です。
私は地方の私立大学から、旧帝大の大学院に進学しました。
他大学の大学院に進学するのであれば、就活も見据えた戦略が必要です。
この記事では、外部大学院を目指す人向けに、企業の視点から、明確な志望動機を持つことの重要性を解説します。
この記事を読む事で、志望動機の作り方、研究室訪問の手順が理解できます。
外部大学の院試を受ける場合は、以下の記事が参考になります。
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参考【化学系】旧帝大院試合格のために実践した3ステップ
他大学の院試を受けるために行った3ステップ
他大学院に進学するのであれば、以下の3ステップが重要です。
ポイント
- 志望動機を明確にする
- 研究室訪問をする
- 過去問を入手し、解く
まずは、そもそもなぜ内部進学ではなく、他大の大学院に進学するのか、明確にする必要があります。
この作業は就活にも関わってくるため、非常に重要です。
次に進学したいと考えている研究室を、見学します。
自分の予想していた環境なのか、研究室に他大学の学生を受け入れる体制があるのかどうかなどを確認します。
受験する大学院(研究室)が決定すれば、過去問を入手し、勉強に集中します。
この記事では、志望動機と研究室訪問について詳しく解説します。
外部大学院進学のメリット/デメリットを自問自答しよう
あいまいな志望動機は就活で不利になる
外部大学院を受ける方に、どうしても問いたいことがあります。
それは、「本当に、外部大学院に移る必要がありますか?」ということです。
他大学院を受験した私が言うのも変ですが、もし目の前に学部4年生の自分がいたとしたら、「他大学院を受けるメリットは本当にありますか?」と質問すると思います。
私は修士を卒業して化学メーカーに就職しましたが、「なぜ他大学院を受験したか」という質問を、就活の面接でよく受けました。
また、私は企業で採用に関わることもありますが、学部と大学院の所属が異なる人には同様の質問をします。
学生がすぐに会社を辞めてしまうのではないかと、企業は疑っているからです。
新卒採用した学生が、一人前に仕事ができるようになるには3年程度は必要です。
その間、企業は育成ののコストを負担することになります。
企業に所属すると実感することですが、採用や教育には、学生が思っている以上の費用がかかっています。
もちろん、その後も長く働き続けてくれれば企業はコストを回収できますが、2,3年で転職してしまうと、教育コストだけ払って利益を回収できないということになります。
学部と大学院で所属を変更する人は、企業でも同じように入社後すぐに転職してしまう可能性があり、採用しても費用対効果が合わないのではないかと、企業の採用担当者は考えているのです。
- 名門大学に所属したいだけでは?
- 学部の研究室上手くやっていけなかったのではないか?
など、外部受験の負の理由を引き出そうとしてくる面接官も実際にいます。
この対策は、面接官が納得できる志望動機を、院試の時点から持っておくことなのです。
学部の研究室同期の就職先は有名企業だった
就活では、内部進学の方が有利に働くことがあります。
私は学部時代、理工系の化学科で有機化学の研究室に所属していました。
実はこの研究室の同期たちは皆、有名化学企業に就職しました。
有名大学出身者の方が良い就職先に入れると考えがちですが、必ずしもそうではありません。
特に、修士で卒業するのであれば、外部受験をすると就活の時期では研究成果が少なく、内部進学者と比べて見劣りしてしまいます。
すなわち、外部進学は就活で不利となる可能性があるのです。
この様な背景があっても、本当に他大学院を受験するか?と自問自答してみましょう。
もし企業の研究職のイメージができていないのであれば、「新 企業の研究者を目指す皆さんへ」という本がおススメです。
研究開発職を目指している学生に向けて、身に着けておいてほしい能力などが書かれています。
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参考【書評】就活生おすすめ本「新 企業の研究者をめざす皆さんへ」
外部大学院に進学するメリット
他大学大学院の受験メリットは2点あります。
ポイント
- ネームバリューの高い大学に所属することができる
- より興味のある研究分野に取り組むことができる
ネームバリューの高い大学に所属することができる
私にとって、いわゆる有名大学に所属することができることは、大学院受験をした大きなモチベーションでした。
大学受験では、大学院で所属した大学に落ちており、大学院でリベンジしたかったという思いが強く、「受験の失敗を取り戻したい」という気持ちが大きかったのです。
希望の大学院に進学できたことは、自分にとって大きな自信になりました。
またそれだけでなく、有名大学に所属すれば、
- 研究費が多く設備も良いので、より高度な研究を行うことができる
- 周りの学生のレベルが高いため、刺激になる
というメリットもあります。
実際、私もこのメリットは感じていました。
地方の私立大学に比べると、旧帝大の設備や研究費は充実していました。
もちろん、研究室単位で比較すると、地方私立大学も良い研究室はいくつかあるのですが、平均でみれば、旧帝大の方に軍配が上がります。
また、周りの学生の化学に対する知識や、学びに対する姿勢も旧帝大の方が高く、刺激になりました。
有名大学の大学院進学することは、自信につながるとともに、研究環境も良くなるというメリットがあるのです。
より興味のある研究分野に取り組むことができる
他大学の大学院受験をすることで、より自分の興味のある研究を行うことができるというメリットもあります。
大学受験の段階で、自分の興味のある研究をしている大学・学部を選ぶというのは非常に困難です。
高校時代には、実際の大学の研究内容まで理解することはできませんし、調査していたとしても、興味が変わるということも多々あります。
自分の興味のある研究を行う研究室が、所属している大学には存在しないが他大学にはあるということは珍しくはありません。
せっかく研究をするのなら、興味と合致する研究室がある大学院に進学するべきです。
その観点で、大学院を移籍するメリットはあります。
志望動機を考えよう
外部進学のメリット、デメリットを理解したうえで、外部受験すると決断したのであれば、志望動機を深く考えましょう。
解説した通り、曖昧な志望動機では、就活時に面接官からの印象が悪くなってしまいます。
もちろん、
- 学歴を良くしたい
- 就活で有利になりたい
という裏の理由があることは、熟知しています。
しかし、それだけでは院試・就活の面接を突破できません。
2年間の研究生活を、意義あるものにするためにも、「研究」を主体にした志望動機を考える必要があります。
志望動機の例文
外部大学院進学者の志望動機の鉄則例文は以下です。
例文
私は~という研究分野に興味がある。
学部で所属していた研究室でも、興味に近い分野があり、そこに所属していた。
しかし、希望の大学院の研究室は、より自分の興味に合致しているため、外部受験をすることにした。
実際に、私が院試と就活で説明していたときの例文を示します。
例文
私は分子レベルのモノづくりと、分子の構造と構造が生み出す機能の関係に興味があります。
有機化学の力で分子構造を変換した化合物を設計し、想定通りの機能をもつ分子を合成したいと考えています。
学部の所属研究室もこの分野に関わっていますが、大学院で希望する研究室はより私の興味に近い研究を行っているため、外部受験をすることにしました。
最も重要なのは、「コアとなる自分の興味」を言語化することです。
「興味」の言語化ができれば、それ以降は定型文に基づいて説明できます。
「興味」の具体例として、外部受験をした私の友人は、「太陽光発電などの環境問題を解決する技術を化学で開発したい」という理由を説明していました。
「コアとなる自分の興味」を明確化できれば、就活の面接も突破できる大学院の志望動機となります。
研究室見学をする
外部大学院を受験するのであれば、研究室見学は必須です。
志望する研究を本当に行うことができるのか、外部生の受け入れ体制はあるかなどを確認する必要があります。
研究室訪問も「興味」が重要
最も重要なのは、選んだ研究室が「興味」や「志望動機」と合致するかどうかを確認することです。
この視点で研究室訪問を行うと、就活での企業選びの時にも役立ちます。
就活も研究室訪問も、自分の「興味」、志望する働き方とマッチするかどうかを確認する作業だからです。
就活では、自分の希望する職種や分野、働き方などを軸に、希望する会社を決めていきます。
研究室を選ぶことも、この作業に似ています。
つまり、希望する研究ができるのか、長時間拘束される研究室なのか、外部生であっても活躍できるチャンスがあるのかなどの、自分の希望と研究室の環境が合致しているか確認するのが、研究室訪問であるということなのです。
それでは、研究室訪問のための3ステップを説明します。
ポイント
- 希望の研究室を探す
- 研究室訪問の日程を決める
- チェックポイントを作成し、訪問時に確認する
希望の研究室を探す
まずは、進学したい研究室を探します。
研究分野から探し出すのは難しいので、例えば大学名と研究科名、例えば「東京大学 工学研究科 化学」などで検索し、存在する研究室を調べます。
目星の研究室が見つかれば、発表している論文を読んでみましょう。
いきなり英語の論文を読むのは難しいですが、タイトルとアブストラクトをDeepL翻訳などで和訳して読めばOKです。
和訳した論文は自分なりにメモしておくと、あとで参照するときに便利なのでおススメです。
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参考【研究開発職が実践】大量に読むための論文メモフォーマット
希望の研究室を複数見つける
同じ研究科から2,3の希望研究室を決めておくことがポイントです。
大学院入試では、所属する研究室の希望を2,3個提出するのが普通です。
受けれ入れ人数は、研究室ごとに決まっています。
例えば、外部生は各研究室1人までなどの決まりがある研究科もあります。
大学院の合格点には達しているが、希望の研究室の最低点には達していないということもよくあります。
希望の研究室に合格しなかった場合、進学を辞退するか、なども事前に考えておく必要があります。
私は2つの希望研究室を、院試では提出しました。
もし、第2希望までに進学できなかった場合は、出身の地方私立大学院に進学する予定でした。
研究室訪問の時期
学部3年生の間に、希望の研究室を決めておくことがおススメです。
学部4年生になると、研究室の研究が忙しくなり、時間を十分に取れません。
3年生の12月~3月までには、希望の研究室を決めましょう。
研究室訪問の日程を決める
希望の研究室を決めたら、研究室の先生にメールを送り、訪問日時を決定します。
基本的に断られることはないと思いますが、先生が数年後退官になるため、「博士までは面倒見れないよ」と言われたことはあります。
メールに書くべきことは3点です。
- 現在の所属大学
- 志望した理由
- 訪問日時の相談
メールの例文を示します。
タイトル:研究室の見学について(〇〇大学 学生名)
□□大学大学院
◇◇ 先生
〇〇大学〇〇学部〇〇学科3年の「学生名」と申します。
◇◇先生の研究に興味があり、進学を考えています。
お忙しいところ恐縮ですが、研究室見学をさせていただけませんでしょうか。
私は生体分子の化学合成に興味があり、特に◇◇先生の~~という研究成果を面白く感じました。
ぜひ、私もその様な研究を行いたいと考えています。
そこで、研究室見学をしたいのですが、ご都合の良い日程はございますでしょうか。
いくつか日程をご提示いただければ幸いです。
お手数をおかけしますが、よろしくお願いいたします。
〇〇大学〇〇学部〇〇学科3年
学生名
希望の研究内容を事前に伝えておけば、当日のコミュニケーションも上手くいくと思います。
チェックポイントを作成し、当日確認する
希望の研究室で何を重視するか、事前にチェックポイントを作成し、確認しましょう。
私が確認したのは以下のポイントです。
- 他大学の学生が過去に活躍しているか
- 先生と学生との距離感
- 研究の裁量はどの程度、学生にあるか
- 外部生を指導してくれる体制はあるか
- 就活の時間を十分に取ることができるか
- 卒業生の就職先の傾向
- 研究時間はどの程度か
先生は訪問した学生が優秀かどうか、志望度が強いのかどうかなどを気にしています。
アピールのために、研究室の論文を事前に確認しておくことをおススメします。
また、どのような研究テーマを担当させるかも、先生はこの時にイメージしているようです。
テーマの重みは修士で卒業するか、博士進学するかで変わりますので、この時点での考えを伝えられるように準備しておきましょう。
志望動機をよく考えよう
地方私立大学から、旧帝大の大学院に進学した私の経験をもとに、志望動機を考える重要性と、それを起点に大学院進学をするための準備を解説しました。
院進学の志望動機を明確にすることは、大学院進学だけでなく、就活でも重要となります。
外部進学を機に、将来何をしたいのか、自分の興味は何なのか、考える機会とすることがおススメです。
受験する大学院が決まった場合は、以下の記事を参考にしてください。
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参考【化学系】旧帝大院試合格のために実践した3ステップ