化学 読書

【糖鎖科学の入門書】糖鎖を学びたい学部生はこの本を読もう

岡本さん
糖鎖に関わる研究をする事になった。良い入門書はないかな。

 

(@okamotobiblio)は大学時代、糖鎖合成に関わる研究を行っていました。

 

有機化学の知識は、学部の授業や、研究室での活動から学ぶことができました。

一方で、糖鎖の生物学については勉強の機会がなく、なかなか身に付けることができませんでした。

 

とはいえ、卒論や修論の研究背景を書く際や、糖鎖関連の論文を読む際にはバイオロジーの理解が不可欠。

英語の総説で勉強を試みたこともありますが、英語の理解だけで精一杯で、生物学の理解まで踏み込めず挫折してしまいました。

 

そこで出会ったのが「おしゃべりな糖」という本です。

糖鎖の生物学を簡単に学ぶことができる、非常に優れた入門書です。


この記事では、研究室配属された学生に、なぜ「おしゃべりな糖」がおススメなのかを解説します。

 

 

「おしゃべりな糖」はどんな本

「おしゃべりな糖」は帝京大学薬学部の笠井献一先生が書いた糖鎖科学の入門書です。

笠井先生は、レクチンの研究など糖鎖科学研究の日本の第一人者であり、本書の糖鎖に関する記述は十分に信頼できるものと言えます。


 

主な収録内容は以下の通りです。

  • 糖鎖はコミュニケーションに関わっている!
  • 糖脂質・糖タンパク質・プロテオグリカンとは?
  • レクチンって何?
  • 【設計図がない】核酸やタンパク質と比較した糖鎖合成の特徴
  • 糖鎖はなぜ・どのように分解されるのか?
  • 糖鎖はどんな病気と関わっているのか?

 

もちろん、「糖鎖研究」を行うためにはさらに専門的な勉強が必要ですが、入門書としては十分な内容です。

全118ページとコンパクトなところも良いですね。

 

「おしゃべりな糖」を読んでほしい人

岡本さん
どんな人におすすめなの?

 

糖鎖を学び始めた人、糖鎖科学に研究室配属に初めて触れた人におすすめです。

 

本書を出版している「岩波科学ライブラリー」は、一般向けに科学をわかりやすく解説いているレーベルです。

糖鎖を初めて学ぶ人にぴったりの難易度であると言えます。

 

私が本書を手にしたのは、ある程度の期間、糖鎖の科学に触れてきてからでしたが、もっと早くにこの本と出合っていたら、苦労を少なくして糖鎖の理解が出来ていたのになと思いました。

簡単に糖鎖科学の基礎が簡単にまとめているため、初心者が手にする1冊目としておすすめです。

 

「おしゃべりな糖」の良い点・悪い点

岡本さん
良い点、悪い点の両方教えてほしい!

 

「おしゃべりな糖」のおすすめポイントと、気を付けるべき2つの点を紹介します。

 

良い点

ポイント

  • 糖鎖科学の概要を効率的に知ることができる
  • 日本語で読むことができる

 

糖鎖科学の概要を効率的に知ることができる

糖鎖の生物学のトピックスを大まかにつかむことができます。

 

糖鎖分野にも優れた教科書は確かに存在します。

例えば、コールドスプリングハーバー 糖鎖生物学など。


しかし、学部で研究室に配属されて、いきなりこの本(690ページ!)を読むのは負担が大きいですよね。

そもそも実験の手技を覚えるのに精一杯のはずです。

 

とはいえ、研究背景を学ぶこと研究のモチベーション上も、研究を深化させるためにも重要です。

コンパクトにまとまっている「おしゃべりな糖」は、糖鎖科学についての知識を手軽に身に着けることができるという点で価値が高いはずです。

 

日本語で読むことができる

糖鎖科学の勉強方法として、英語の論文や総説で学ぶという方法もあります。

 

大学であれば、コストをかけず文献を読むことができるため、この方法も選択肢としてはアリです。

実際、私もこの方法で糖鎖の知識をストックしていきました。

 

しかし、この方法は英語で読むというハードルがあります。

もちろん翻訳アプリを使えば、これらの文献も日本語で読むことはできます。

 

しかし、平易な自然な日本語で読むことができるという点で、「おしゃべりな糖」は優れていると思います。

他の教科書に比べても比較的安価(1200円税抜き)であるため、入門書として手を出すのには丁度良いと思います。

 

悪い点

ポイント

  • 研究のためにはより専門的な勉強が必要
  • 糖鎖の構造が模式図で表現されている

 

研究のためにはより専門的な勉強が必要

「おしゃべりな糖」はあくまで一般の人も理解できるように書かれた入門書です。

したがって、卒論や修論のイントロ作成のための情報を得るためには、専門的な教科書や、過去の文献の引用が必要になります。

 

「おしゃべりな糖」だけでは、糖鎖科学の深い知識をカバーできないんですね。

もし教科書として2冊目に読むとしたら、「糖鎖生物学―生命現象と糖鎖情報」が良いと思います。


もちろん、自分の研究に関係する論文を読んで勉強するという方法も良いと思いますし、私もこちらの方法を採用しています。

 

糖鎖の構造が模式図で表現されている

本書では、糖鎖を構成する糖は模式的に表現されています。

 

有機化学のバックグラウンドを持つ私としては、構造式で書かれている方がわかりやすいと感じました。

有機化学系の研究室で糖鎖の研究に関わることになった人は、糖の構造を自分で書き出したり、調べたりなどして、構造式を見える形で理解するようにした方が良いと思います。

化学式の形で理解できるということが、化学系の研究者にとっては重要です。

 

面白かった点

私は糖鎖を有機化学的に合成していたので、5章「糖鎖をつくる、糖鎖をこわす」を興味深く読みました。

 

特に「生体内では糖鎖を作るための設計図がない」、という点は非常に面白かったですね。

核酸やタンパク質の場合、遺伝子が構造を指示していますが、糖鎖にはそれに対応する情報がありません。

 

結果、品質がそろっていない糖鎖を持つ化合物が合成されます。

品質がそろっていない化合物が、どのように生体中で振る舞うのか?と考えると、非常に興味深いです。

 

また、その様な複雑な糖鎖合成には、様々な糖転移酵素が関わっています。

人間の手でも、自由自在に糖鎖を合成できるようになりたい。

合成屋の私は、その様に感じて研究へのモチベーションを高めることができました。

 

糖鎖を勉強しよう

糖鎖科学の入門書として「おしゃべりな糖」を紹介しました。


 

コミュニケーションに関わる化合物として、糖鎖が紹介されています。

研究室配属された学部生が読むのには丁度良い難易度です。

 

糖鎖研究をすることになった方は、入門書としてぜひ読んでみてください。

 

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