化学 読書

【高校生で読みたかった】大学有機化学の入門にはこの本

岡本さん
岡本さん
大学の有機化学の授業が難しい。良い入門書は無いかな? 有機化学の研究って、どんなことをしているの?

 

(@okamotobiblio)は大学時代に有機化学の研究を行い、現在もその知識を生かして化学メーカーで働いています。

しかし、私が高校生や大学生の時は、大学の有機化学の研究というものを具体的にはイメージ出来ていませんでした。

 

「医薬品や有機ELを作るための研究」と、ざっくりは理解できましたが、実際どのように研究を進めていくのか、どのような研究に価値があるのかなどは、学部生のうちから知るのは難しいのです。

有機化学の「研究」について、学ぶことができる本は無いだろうか?と当時は考えていました。

 

「文系でも3時間でわかる 超有機化学入門」は、こんなお悩みを解決することができる本です。


自分が高校生のうちに読めていたら、あるいは学部生で読んでいたら、有機化学の「研究」について理解を深めることができていたと思います。

この記事では、「文系でも3時間でわかる 超有機化学入門」おススメする理由を解説します。

 

 

「超有機化学入門」はどんな本?

「文系でも3時間でわかる 超有機化学入門」は、大学で学ぶ・研究する有機化学を、専門知識がない一般読者でも理解できるように解説した有機化学入門書です。

大学で学ぶ化学の知識(高校の知識は少し必要)がなくても、研究の最先端まで見せてくれる、お手軽でありながら野望に満ちた書籍だと思います。

 

著者の諸藤達也さんは、「もろぴー」先生(@morop_)として、twitter、youtubeなどで有機化学のコンテンツを配信している大学の先生です。

私もtwitterでフォローしていますが、「有機化学」に対する愛情があふれているんですよね。

私が学生であれば、こんな先生のもとで研究してみたいと思っていたことでしょう。

 

本書は物語形式で進行し、有機化学、その中でも「カップリング反応」について解説しているところが特徴的です。

理系科目、その中でも特に化学が苦手な女子高生の「理香」に対して、理香の家庭教師をすることになった大学院生の「勇樹」が有機化学を解説します。

 

「理香」の発言には、すべてイラストが付いているのですが、表情豊かでかわいい!

炭素や臭素、パラジウムなどの元素もイラストで表現されていますが、それらも愛嬌があり、飽きさせません。

それでいて、構造式や反応機構など、有機化学の情報は学問的にもしっかりとしたものが掲載されています。

まさに「有機化学初心者を、研究最先端まで連れて行ってくれる」、非常にエキサイティングな本だと言えます。

 

「超有機化学入門」のおすすめポイント

「文系でも3時間でわかる 超有機化学入門」には2つのおすすめポイントがあります。

 

ポイント

  • 原則理解から研究の最先端まで知ることができる
  • 有機化学研究の本質を理解できる

 

原則理解から研究の最先端まで知ることができる

この本では、2つの原則をもとに有機反応を解説しています。

その2つとは、

 

  • 炭素にはプラスとマイナスがある
  • プラスとマイナスの作用により炭素同士がくっつく

 

非常にシンプルですが、多くの有機反応はこの原理で説明することができます。

本書では、有機合成の2つの基本原理をもとに、ノーベル化学賞を受賞した「クロスカップリング反応」を解説しています。

 

さらに読み進めれば、もろぴー先生自身の最新研究成果も理解できる構成となっています。

いかに、この2つの原則が強力であるかがわかりますね!

なお、もしあなたが大学生で、有機化学をより深く学びたいのであれば、「演習で学ぶ有機反応機構」がおススメです。

 

参考【研究開発職が解説】「演習で学ぶ有機反応機構」の使い方

 

有機化学研究の本質を理解できる

有機化学の知識だけでなく、研究に対する考え方、研究者の人生まで垣間見えることがこの本の魅力です。

 

有機化学研究者のモチベーションとは何なのでしょうか?

 

その1つは、過去の研究成果の課題を見つけ、より良い提案をすること。

先人たちよりも、「自分はより深く化学を理解しているんだぞ」、というある種の優越感。

 

このために、日夜、実験に勤しんでいるといっても過言ではありません。

 

数か月間結果が出なくても淡々とデータを集める。

すべては「問題を解くことができた」ということを高らかに宣言するため。

 

本書では、その様な研究者たちの生態をリアルに描いています。

大学の化学科に興味のある高校生や、大学1,2年生で研究に興味がある人が読めば、大学での研究にリアルに触れることができます。

 

「超有機化学入門」で特に面白かった点

真摯に有機化学、特に合成化学を解説している点が面白く、共感しました。

 

化学は他のサイエンス分野と比較しても、あまり一般読者受けの良い分野ではありません。

 

宇宙の神秘や素粒子の不思議を説明する物理学、生命の神秘や医学とのかかわりも深い生物学、天才たちが集う数学などと比較して、あまりキャッチーではないんですよね。

化学の一般向け書籍で成功した事例としては、歴史と絡めたものや元素を解説した書籍程度。

 

構造式が登場すると、売り上げが半減すると言われるなか、真っ向から分子のモノづくりを解説する書籍を作ってしまったというのは非常に挑戦的です。

読者受けしないリスクを背負っているわけですよね。

 

ですが、レゴブロックのように分子をくっつけるという、分子レベルのモノづくりこそが有機化学の面白さであると私は思います。

この面白さを一般読者に届けたいという強い思いで本書は書かれたのでしょう。

その強い熱意が伝わる本となっています。


ぜひ化学徒のみならず、多くの読者に「文系でも3時間でわかる 超有機化学入門」を手に取ってもらえると嬉しいです。

 

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