理系の研究職にはコミュニケーション能力が必要ない、というイメージを持っていませんか?
確かに黙々と実験作業をする事も多いですし、営業職などと比べるとコミュニケーション能力が必要となる機会が少ないのは事実です。
しかし、研究職であってもコミュ力は必要です。
いわゆる”コミュ障”でクビになる、ということは無いと思いますが、思うように仕事を進められないことが増えてくると思います。
私(@okamotobiblio)は化学メーカーの研究職として5年以上働き、コミュニケーション能力の重要性を実感してきました。
この記事では、どのような場面でコミュニケーション能力が必要なのかを説明します。
また、私自身、就職時にはコミュニケーション能力には自信がありませんでしたが、自分なりに練習を繰り返すことで能力を向上させることができています。
この記事では、コミュ力のトレーニング方法についても解説します。
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目次
コミュニケーション能力が必要とされる場面
研究職において、コミュニケーション能力が必要とされる場面は3つあります。
それぞれについて、具体例を含めて解説します。
ポイント
- 報告
- ディスカッション
- 人を動かす
報告
社内外のミーティングやチーム内での情報共有など、「報告」を行う機会は多いです。
研究職と言えども、企業ではチームで働きます。
したがって、研究の進捗報告は必要な業務となります。
また、「コミュニケーション」という言葉からは口頭で行うことをイメージすると思います。
しかし「報告」の場合、必ずしも手段は口頭に限りません。
何かの情報を伝えることがコミュニケーションであるとすると、研究成果としての報告書作成、データ分析などもコミュニケーションと言えるのです。
データをまとめて、わかりやすい資料に加工する経験を、研究職では多く積みます。
そして、資料作成の実力もコミュニケーション能力によって左右します。
優れた報告能力が、研究職にとって必要なコミュニケーション能力の1つなのです。
ディスカッション
研究内容のディスカッションも、研究職などの理系職にとって重要なコミュニケーション能力の1つです。
ディスカッションすることで、自分のテーマをより良くし、社会への還元に近づけることができます。
また、チームメンバーの成果についてもディスカッションすることもあります。
クライアントが存在する業務であれば、顧客の担当者とも議論する機会はあります。
例
- 研究成果をどのように解釈するか。
- 別の方法はないだろうか。
- この結果は本当に目的を達成していると言えるのか。
などの質問をする技術と、それに適切に答える応答の技術が必要となります。
自身やチーム内の成果を事業の成功に結び付けるために、ディスカッションの能力は重要なコミュニケーション能力なのです。
人を動かす
学生時代はあまり経験しない一方で、就職後に重要なコミュニケーション能力の1つが「人を動かす」ことです。
人を動かす業務には以下のようなものがあります。
例
- 後輩社員や派遣社員に実験を依頼する。
- 研究成果を製造部門など他部門に展開する。
- 上司に新企画を説明して承認を得る。
「報告」や「ディスカッション」では、相手はある程度受け身の姿勢で問題ありません。
一方で、「人を動かす」場合には、実際に仕事をしてもらう必要があります。
相手の状況、考え方を先読みする必要があるので、コミュニケーションとして最高難易度となるのです。
一方で、自分の研究成果を社会に還元するためには必ず行わないといけない仕事ですし、その分やりがいもあります。
この記事を読んでいるのが学生さんであるのであれば、「人を動かす」エピソードがあれば就活でのウケが良いと思います。
若手社員であれば、意識的に「人を動かす」経験を積んでいくことで、社内で活躍する機会が増えるでしょう。
コミュニケーション能力を鍛える方法
私は決してコミュニケーション能力に自信があったわけではありません。
しかしコミュニケーション能力を鍛えることで、プロジェクトリーダーとして仕事ができるようになりました。
コミュ力は生まれつきのものと考えられがちですが、意識的にトレーニングすることで、上達させることができます。
ここでは、私が実践した「報告」、「ディスカッション」、「人を動かす」というコミュ力すべてをを鍛える4つの方法と、各々の能力を鍛える方法を解説します。
ポイント
- 音読する
- 目的・課題・解決策を想定する
- 先輩社員と練習する
音読する
音読することがコミュニケーション能力改善の第一歩です。
私は学生のころから、人との会話に苦手意識を持っていました。
苦手を克服するため、会話を要素に分解し、何が苦手なのか分析することにしました。
その結果、そもそも口から言葉を発するのが苦手なのではないかと気づいたのです。
私のように口数が少ない人は、学生時代から人と話す経験が少ない。
「何を話せば良いかわからないから話せない」ということもありますが、声を出す経験が少ないことが原因なのではないかと考えました。
そこで、私は出社前に10分間だけ音読を取り入れることにしました。
その結果、この10分間が声を出すのウォーミングアップとなり、「話すことの抵抗感」がだんだん薄れていきました。
読むものは何でも構いません。
私の場合、小説やビジネス書も音読しますし、仕事で使う英語論文を読むこともあります。
口頭でのコミュニケーションが、研究職であっても基本です。
普段、会話の回数自体が少ない人は、音読を生活に取り入れることをおススメします。
目的・課題・解決策を想定する
ビジネスにおけるコミュニケーションには型が存在します。
型の1つは、「ゴール」、「課題」、「解決策」の情報を必ず含めるというものです。
ポイント
- ゴール
- 課題
- 解決策
この3つは、仕事を進めるうえで必ず必要な要素です。
仕事の「ゴール」を決めていないと、どこに進めば良いかわからなくなります。
現状や将来想定される「課題」を明確化しておくことで、何を乗り越えれば良いかがわかります。
「解決策」を把握しておくことで、実際にどんな作業をこれから行えば良いのかがわかります。
この3つの情報を組み込むことで、相手に伝わるコミュニケーションになるのです。
例
- 収率80%目標の反応で、精製方法が課題。カラム溶媒を検討する方針。
- 業務の生産性を10%向上させたい。ある作業に時間がかかっていて、新規機器を購入することで解決したい。
- 製造に向けてコストを抑えたい。ある工程が課題であると考えているが、自分の部署では対応できないので、製造部で対応してもらえないか。
3つの情報をメモしてから、会話を開始するとスムーズに意思疎通することができるようになります。
先輩社員と練習する
1人でできるコミュニケーション改善法を中心にお伝えしていますが、コミュニケーションは複数人で行うことが前提です。
自分以外の誰かとの練習が、最終的には必要となります。
年齢が近い先輩社員にお願いして、練習に付き合ってもらったり、フィードバックをしてもらうのが良いと思います。
以下は私が実践した方法をです。
例
- 顧客との打合せの前に、報告内容に過不足がないかチェックしてもらう。
- メールの文章に問題がないか確認してもらう。
- チームミーティングの進捗報告終了後、先輩社員にフィードバックしてもらう。
新入社員では自分から先輩社員にお願いするのはハードルが高いと考える人もいるかもしれません。
私は若手社員の育成担当として、複数人の社員とコミュニケーションのトレーニングを行っています。
もしチューター制度のようなものがあるのであれば、練習に付き合ってもらえないかお願いしてみましょう。
続いて、個々の3つの能力を鍛える方法を解説します。
ポイント
- 報告:日報を書く
- ディスカッション:自分でツッコミを入れる
- 人を動かす:正しさではなく、共に創ることを考える
報告:日報を書く
日報を書くことは、コミュニケーションの練習につながります。
日報は、文書として目で後から内容を確認できるため、改善を行いやすいというメリットがあります。
したがって、「報告」に慣れていない新入社員には丁度良い練習ツールとなります。
また、文章作成の技術も向上するため、資料作成の技術も向上します。
日報にはその日の「実験結果」、「データの解釈」、「改善点・解決策」を書くのがおススメです。
日報の書き方は以下の記事を参考にしてください。
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参考【新人向け】研究開発職に守ってほしい日報の書き方
ディスカッション:自分でツッコミを入れる
報告しようとしている内容に対して、自分でツッコミを入れるとディスカッションの練習になります。
例
- なぜこの実験方法を選んだのですか?
- スケージュール通り進捗していますか?
- 最も重要な課題は何ですか?その解決策は?
自分が立てた問いに対して、適切に答えられるか確認します。
重要なのは、実際にディスカッションで登場した質問と、自分が立てた問いとのギャップを知ることです。
ディスカッション相手がチーム内なのか、他部署なのか、あるいは社外なのか。
各々話題となる部分は異なります。
想定と結果のギャップを知ることで、それぞれのディスカッション相手が何に興味を持っているのか、予想の精度が高まります。
人を動かす:正しさではなく、共に創ることを考える
「人を動かす」コミュニケーションをするためには、相手と共に問題を解決するという姿勢を示すことが重要です。
そもそも人には「現状バイアス」が存在し、新たな行動を促すには壁があります。
現状バイアスとは、現状の行動を続ける方が新たな行動を起こすよりも有利であると判断する心理的な傾向です。
この際、自分の依頼内容は「正しい」ので動いてほしいとお願いしたとしても、人はなかなか動きません。
「正しさ」を主張すると、逆に反発心を抱かれやすいのです。
重要なのは「納得感」です。
納得感を与えるコミュニケーションをするためには、「共に問題を解決する」という姿勢を示すことが重要となります。
問題解決のためには、4つの壁があることを認識しておくことが重要です。
ポイント
- 関係性の壁
- 情報整理の壁
- 思い込みの壁
- 損得勘定の壁
この壁を乗り越える伝え方をすることで、人は動きやすくなります。
企画を提案する前、重要なプレゼンの前には、この4つの壁を意識しておくことが重要になるのです。
「人を動かす」ためのより具体的な方法は、以下の書籍に書かれています。
私はこの「気持ちよく人を動かす」を参考に、社内外の人とコミュニケーションしています。
ぜひ読んでみてください。
研究職もコミュ力が重要
研究職に必要なコミュニケーション能力と、それを鍛える方法を解説しました。
私自身、コミュ力に自信はありませんでしたが、入社ご練習することで、チームのリーダーを任されるまでに成長することができました。
コミュニケーション力は後天的に鍛えられる能力です。
ぜひ、この記事を参考に練習をしてみてください。
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